薄茶と濃茶、違いは何か

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茶道には「薄茶(うすちゃ)」と「濃茶(こいちゃ)」があります。どちらも同じ抹茶を用いますが、点て方や味わい、そして茶席での役割は異なります。まずは、分かりやすい違いから見ていきます。

濃茶は、抹茶を多めに入れ、湯を少なめにして練るように仕上げます。泡は立てず、とろりとした質感になります。味わいは濃厚で、甘みや旨味が強く感じられます。

薄茶は、抹茶の量をやや控えめにし、湯を多めにして点てます。茶筅で泡を立て、軽やかな口当たりに仕上げます。さっぱりとした飲み心地になります。同じ抹茶でも、分量と扱い方によって印象は大きく変わります。

ここで、用いられる抹茶そのものにも触れておきます。濃茶は多くの抹茶を用いて練るため、苦味や渋みが出にくく、甘みや旨味の強い抹茶が求められます。茶の性質がそのまま表れやすく、わずかな差も味に影響するため、より質の高い抹茶が用いられます。

なお、抹茶は複数の茶葉を合わせて風味を整える「合組(ごうぐみ)」が一般的に行われています。
一方、薄茶は湯の量が多く、軽やかに点てるため、濃茶ほど強い甘みや旨味を前提とせず、さっぱりとした味わいが生かされます。

茶事では、懐石のあとに濃茶、その後に薄茶が続きます。濃茶は茶事の中心となる一服です。これに対し薄茶は、濃茶のあとや大寄せ茶会などで用いられ、やや和やかな雰囲気の中でいただく茶と位置づけられます。重い・軽いという優劣ではなく、場面ごとの役割の違いと考えると整理しやすいかもしれません。

濃茶は、本来は一碗を客同士で順にいただく形式(飲み回し)が基本とされています。一つの茶碗を回しながら、同じ茶を分かち合うかたちです。ただし、新型コロナウイルス感染症の流行以降は、衛生面への配慮から一人一碗で供されることも増え、現在もその形式をとる茶会は少なくありません。薄茶は、一人一碗で供されるのが一般的で、亭主が選んだ茶碗でいただきます。
濃茶と薄茶では、菓子との関係も異なります。濃茶の前には主菓子が出されます。口中に甘みを含ませることで、濃厚な茶の苦味や渋みをやわらげ、味わいを整える役割があります。主菓子は水分を含んだ生菓子で、濃茶に向けて口当たりを整える意味も持っています。

薄茶には干菓子が添えられることが多く、口中をさっぱりとさせながら、軽やかな茶の味わいを引き立てる役割があります。干菓子は水分の少ない菓子で、後味を残しすぎず、薄茶の流れに合うかたちになっています。

薄茶と濃茶は、どちらが上というものではなく、茶の湯の中で役割を分けられた二つのかたちです。
同じ抹茶でありながら、扱い方によってこれだけ異なる表情を見せるところに、茶の湯の面白さがあります。

濃茶

薄茶

参考文献

茶の湯をまなぶ本 改訂版 茶道文化検定公式テキスト 1級・2級』淡交社
茶の湯がわかる本 改訂版 茶道文化検定公式テキスト 3級』淡交社
『新版 茶道大辞典』淡交社(絶版)
『茶の湯Q&A』淡交社(絶版)

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