
第1章 茶道との運命的な出逢い
「ぼんやり入口がわからない」から始まった私のお茶との縁
インタビュアー:はなさんが茶道と初めて出逢ったのは、いつ頃だったのでしょうか
はなさん:最初の接点は、子どもの頃ですね。小学生に上がる前まで、祖母と一緒に住んでいたのですが、そこがちょうどお茶のお稽古場になっていたんです。祖母は生徒として茶道を習っていて、家でお稽古が行われていました。
イ: その頃から、茶道に触れる機会があったんですね。
は: ええ、でも当時はまだ小さかったので、稽古の内容まではわからなかったんです。ただ、祖母と稽古場に行って、一緒にお菓子をいただいた記憶がすごく印象に残っていて。それが、私にとっての「お茶との最初の出逢い」だったと思います。
イ: それからまた茶道に興味を持たれたのは?
は: 祖母が亡くなって、着物を引き継いだのが一番大きなきっかけです。私の実家は商売をしているのですが、祖母はお店に出る時と茶道のお稽古には必ず着物を着ていたので、この着物を着ていける場所がないかな、と思ったのが最初です。でも、茶道のお稽古って、「どこへ行けばいいのか」「どう始めていいのか」ぼんやり入口がわからないまま過ごしていたんです。カルチャーセンターに行くのか、茶道のお稽古場なんて誰かの紹介がないとわからないし、当時は本当に敷居が高く感じていました。

奇跡的な「ご縁」が導いてくれた一歩
イ: そんな状況から、どのように一歩を踏み出されたのでしょう?
は: NHKの番組で、偶然、茶道家の筒井紘一先生とご一緒させていただいたんです。その番組のテーマが「千利休」だったのですが、先生とお話していたらとても面白くて、思い切って先生にお茶をやってみたいとご相談したら、すごく親切に、「ここはどう」と稽古場を紹介してくださって。
イ: 偶然のご縁が背中を押してくれたんですね。
は: そうなんです。さらに、たまたま淡交社さんから、茶道のさまざまな分野で活躍されている方々のところにお伺いする連載(「はな、茶の湯に出会う」)のご依頼をいただいたんです。
その最初の撮影で、お茶会を体験することになって、そこで高田馬場にある茶道会館の北見宗幸先生に出逢い、初めて濃茶をいただいたんです。私、コーヒーも飲めないのですが、その濃茶がすごく美味しかったの!あの味で「ここに行こう!」と決めました(笑)。
私が考える稽古選びのポイント
イ: 濃茶が美味しかったことが決め手になるなんて(笑)。
はなさんご自身は濃茶の味で決められたとのことですが、これからお稽古を始める方に向けて、稽古場を探すポイントや一歩を踏み出すための具体的なアドバイスはありますか?
は: 稽古場を探すなら、まずは「誰かに相談してみる」のが良いかもしれません。案外聞いてみると、周りの会社の方や知人の中に習っている人がいるものです。また、茶道はお菓子や、お花、掛け軸など、色々な分野で構成されているので、「自分の好きなものから選んでみる」という入口もありだと思います。
★ はな流・稽古場探しのヒント(まとめ)
1. 身近な人に相談してみる:案外、周りに習っている人がいるもの。
2. 自分の好きなものから選ぶ:お菓子、お花、掛け軸など、興味のある分野を入口にしてみる。

第2章 ギャップが魅力!意外な稽古場の雰囲気
「真面目なのにできない」自分を笑える時間
イ: 実際に稽古を始められて、当初の「茶道」のイメージとギャップはありましたか?
は: すごくありました(笑)! もっと作法が厳しくて、正座してシャキンシャキンと真面目にやらないといけない世界だと思っていたんです。でも、私が通っている稽古場は、すごく和気あいあいと楽しいんです。もちろん、先生方は真面目に指導してくださいますが、笑いも多くて(笑)、すごくゆったりと柔らかい雰囲気。
イ: 稽古場の仲間、お社中(おしゃちゅう)の方々との交流はいかがですか
は: これが本当に楽しくて。私の通うクラスは弁護士さんやお医者さんなど、お仕事で成功されている方が結構いらっしゃいます。皆さん、すごく立派な方々なんですけど、稽古では私を含めて、みんな同じことができないんですよ(笑)!
イ: それは面白いですね。仕事のスキルとは別の難しさがあると。
は: そうなんです。2週間前に習ったことも忘れちゃうし、「あれ、こんなこともできないんだ」って。でも、そこで「できない、どうしよう」ではなく、「まだこんなにできないことがある!」って笑って共有できるのが本当に良いんです(笑)。仕事で「得意なこと」ばかりをしている大人が、ここでは「得意じゃないこと」を真剣にやる。「こんなに人間として未熟だったんだ」と毎回気づかせてくれる場所です。


遊び心満載!はな流「企画茶会」の挑戦
イ: はなさんは、ご自身でユニークなお茶会を企画されたそうですね。
は: はい。プライベートでお茶会を何度か開催させていただきました。一つは、大好きなパンダのシャンシャンが中国に行く前に「シャンシャン応援茶会」を(笑)。茶碗はシャンシャンの顔のフォルムのお茶碗にシャンシャンの顔を絵付けしたものを準備したり、お菓子はシャンシャンが好物の「りんご」の形に、苦手な人参をかたどった羊羹を忍ばした主菓子を亀屋萬年堂さんに作っていただいたり、シャンシャンへの愛を詰め込んだお茶会になりました。すべては「シャンシャンの魅力を皆に伝えたい!」という想いでやらせていただいて、大成功でした。
イ: それは楽しそうですね。他にも「ベースボール茶会」があったとか。
は: それも面白くて(笑)。実は、お稽古の帰り道に、ふと「野球のバットと茶道具って似てるんじゃない」とひらめいたんです。バットって折れると廃棄されるか、お箸などに生まれ変わるんですが、茶道具も同じように、第二の人生を歩む道具が多い。そこで、「バットを茶道具にしよう!」と思いついて。
イ: 野球のバットが茶道具に!
は: はい。ジャイアンツファンの先輩と企画し、実際に選手が使用していた硬いメープル材のバットを、職人さんに頼んで棗(なつめ)や蓋置、花入に仕立ててもらったんです。さらに、茶碗は自分たちでヘルメットの絵付けをしたり、ボール形のお菓子をデザインしたり、本当に遊び心満載で(笑)。茶道って、こんなふうに「自分の好きなもの」をテーマに自由に楽しめるんだ、ということを発見できました。



第3章 私を整える時間。茶道がくれる人生のプラス
姿勢も心も整う!お茶が教えてくれた「豊かさ」
イ: お茶を習い始めて、ご自身の生活や内面に変化はありましたか?
は: すごく変わりました。モデルの仕事柄、姿勢は意識していましたが、お稽古を始めてからは、姿勢はもちろんのこと、指先まで意識するようになりました。あと、旅先お旅館などでのちょっとしたお辞儀とか、お茶の飲み方とかも以前よりも美しくできるようになったかもしれません。着物を着ると自然と姿勢がよくなりますし、体幹も鍛えられる。家に帰るとちょっと雑に扱っちゃうけど(笑)、お茶の稽古場では、自分の心身を整える時間を持てています。
イ: 「心身を整える時間」は、忙しいキャリア層の方々が特に求めているものかもしれませんね。
は: はい。そして何より、茶道は日本の文化を様々な角度から教えてくれるものだと思います。実は、私はずっとインターナショナルスクールに通い、大学でも英語で授業を受けていたので、日本の文化について学ぶ機会が少なかったんです。仏像が好きだったので、仏像を通じて日本の文化を学んだりしていましたが、茶道は自分が住んでいるこの国の文化を、もっと深く、いろんな角度から学ぶことができる場だと思います。
お花やお軸、お道具など、茶室に入った瞬間から、目に飛び込んでくるものすべてで四季の移ろいを繊細に感じることができます。
お茶を続けることで、自分が住んでいるこの日本という国を、もっと好きに、もっと深く知るきっかけを与えてくれました。お茶をやることで、心は豊かになると断言できます。

「着物」は自己投資。無理せず続けるマイルール
イ: 着物については、お稽古はいつも着物で?
は: はい、基本は着物です。だって、私のきっかけは「祖母の着物を着たい」だったから!着つけを忘れないための、言わば「自己投資」ですね。でも、さすがに雨の日や、本当に疲れて「死にそう」な日は洋服にしちゃいます。無理はしない。
イ: 着物を揃えるのは大変そうですが……。
は: 毎回お茶会ごとに新調するのは無理なので、私は中古で探したり、リサイクルショップを活用しています。お稽古用なら、染みがあってもいいし、もっとカジュアルに。ワンセットでも季節ごとにあれば、最初は十分楽しめますよ。
第4章 これから始める方、すでに習っている方へ
イ: 最後に、茶道に興味があるけど迷っている方、そして、すでに習い始めている読者にアドバイスをお願いします。
は: 一番は「楽しむこと」です。そして、「目標を立てること」。私も「次の茶会で薄茶のお点前をやってみよう」とか、先生に「次の目標はこれね」とポンと与えてもらえるから、頑張れるんです。特に目標がなければ、どうしてもダラダラと稽古がおろそかになってしまう。
でも、本当に茶道は長く続けられるお稽古だと思います。私の社中には90歳以上の先輩もいて、皆さんとにかくお元気!私も「心身ともに元気な素敵なおばあちゃん」になるのが最終目標かな(笑)。
だから、焦らず、一歩踏み出して、まずは楽しんでみる。それが、茶道の面白さ、そして、心豊かな時間への第一歩だと私は思います。

はな
はな|神奈川県横浜市出身。2歳から横浜のインターナショナルスクールに通い、17歳からモデルを始める。上智大学比較文化学部比較文化学科で美術史を学び 、テレビ・ラジオなど活動を広げる。現在もファッション誌で活躍するかたわら、FMヨコハマ「Lovely Day~hana金~」(毎週金曜)のナビゲーターをつとめる。2016年に雑誌「淡交」での連載をきっかけにお茶の稽古を始め、これまでに『はな、茶の湯に出会う』『今日もお稽古日和』『ニッポン茶室ジャーニー』(いずれも淡交社刊)などお茶に纏わる書籍を出版。2003年にパンダ大使、2017年に国宝応援大使、2019年に奈良国立博物館評議員に就任。
撮影:川本聖哉
